こども音楽フェスティバル 2025 【DAY2】レポート

フェスティバル2日目、5月4日(日・祝)の様子をレポートします!
◆0才からのオルガン・コンサート
- ⒸKoji Iida/SUNTORY HALL
5月4日(日・祝)の『こども音楽フェスティバル 2025』2日目は、10時開演の「0才からのオルガン・コンサート」でスタート。赤ちゃん連れのファミリーも多く訪れ、小さなこどもたちでいっぱいの大ホールの客席は壮観でした。
華やかな花柄のワンピースに身を包んだ石丸由佳さんが登場し、アイヴズの「イントラーダ」でコンサートの幕開け。赤ちゃんの泣き声もかき消されるほどの音量と迫力ある音色で、天から降り注ぐ音のシャワーを浴びました。
- ⒸKoji Iida/SUNTORY HALL
石丸さんがこの日のために組んだプログラムは、サントリーホール自慢のオルガンの音色をフルに味わうことのできるもの。プリンシパル、フルート、ストリングス、リードという4種類の音色のグループについて、実際に音を出しながら説明してくださいました。「チクタク」という小さな音が聞こえてきそうなハイドンの「音楽時計のための作品」を演奏すると、こどもたちが耳をすませ、会場がすーっと静まりかえる場面も。言葉がまだわからない小さな子にも、音楽は語りかけられるのですね。
ラストに演奏された映画『スター・ウォーズ』のメインタイトルは、映画の名シーンが色鮮やかによみがえってくるほどのリアルさにびっくり。「オルガンはひとりオーケストラ」という石丸さんの言葉をまさに実感しました。
たった30分とは思えないほど盛りだくさんの内容で、「コンサート」というよりも、オルガンと一緒に「遊んだ」という感覚。オルガンという楽器について、もっと知りたくなった方も多いのではないでしょうか。
◆Concert for KIDS ~0才からのクラシック®~<スペシャル版>
続いて 11時からはブルーローズ(小ホール)で「Concert for KIDS ~0才からのクラシック®~<スペシャル版>」。ソニー音楽財団が日ごろから全国のコンサートホールで開催している名物コンサートシリーズのスペシャル版ということで、豪華なメンバーが集結しました。
- ⒸTaira Tairadate/SUNTORY HALL
ソプラノの鵜木絵里さんの進行により、ヴァイオリン(礒絵里子、神谷未穂)、チェロ(海野幹雄)、マリンバ(浜まゆみ)、ピアノ(中川賢一、新居由佳梨)、クラリネット(金子平)、フルート(荒川洋)、トロンボーン(加藤直明)、トランペット(上田じん)という楽器それぞれの紹介を織り込みながら、各楽器の魅力が伝わる曲をソロやアンサンブルで演奏していくプログラム。モーツァルトの「トルコ行進曲」では、客席のこどもたちも立ち上がって、リズムに合わせて手拍子や足踏みで参加しました。
- ⒸTaira Tairadate/SUNTORY HALL
コンサートが終わったあと、「どの楽器が好きだった?」とお子さんに質問する親御さんの姿も。弦楽器、管楽器、打楽器、鍵盤楽器、歌……さまざまな楽器との出会いを、赤ちゃんから楽しむことのできる1時間でした。
◆チョコレートプラネットを迎えたスペシャルステージ!
- ⒸKoji Iida/SUNTORY HALL
12時になると、カラヤン広場の屋外ステージに公式アンバサダー/配信総合パーソナリティの清塚信也さんと、パートナー・パーソナリティの高見侑里さんが登場。清塚さんが「お笑いの同士」と呼ぶ人気お笑いコンビ、チョコレートプラネットをゲストに迎えてのスペシャルステージが開催されました。
TT兄弟のコスチュームで、「ティー! ティティー! ティーティーティティー!」と歌いながらステージに現れ、「T」の文字を探してさっそく笑いを誘うチョコプラのふたり。無事に『こども音楽フェスティバル』の「ティ」を見つけて喜ぶふたりに、清塚ティーチャーからクラシック音楽についてのクイズが出題され、会場のお客さんも巻き込んでのクイズ大会がはじまります。
「ピアノの正式名称は?」という問題に、会場から「ピアノフォルテ」という答えが出たものの、「おしい!」と清塚さん。正解は「クラヴィチェンバロ・コル・ピアノ・エ・フォルテ(弱い音も強い音も出るチェンバロという意味)」とのことで、なかなか難易度が高いクイズのようです。
そうかと思えば、「ベートーヴェンが『運命』で初めて演奏した楽器はなんでしょう?」という問題に、チョコプラの松尾さんが「トロンボーン」とまさかの一発正解を出してしまう事態に……。トロンボーンは聖なる楽器とされていたため、ベートーヴェン以前はオーケストラで使うことがなかったんだそうです。
「今から演奏するこの曲名はなんでしょう?」という問題では、清塚さんが演奏する音楽に合わせて、チョコプラのふたりが気だるいイメージで「風呂キャンセル」「二日酔い」という珍曲名を回答。会場からは「別れの曲」という声も上がりましたが、正解は「練習曲第3番」でした。たしかに日本では「別れの曲」と呼ばれていますが、これは日本でつけられた通称なのだそうです。ショパン(Chopin)の「C」にちなんで、TT兄弟ならぬCC兄弟をリクエストされたふたりの困惑ぶりも見ものでした。
- ⒸKoji Iida/SUNTORY HALL
最後は、清塚さんが演奏する「白鳥の湖」の作曲者、チャイコフスキー(Tchaikovsky)の「T」で「ティー!」をこどもたちと一緒にキメました。クラシックのフェスティバルに笑いの渦を巻き起こす異色の企画も、アンバサダーの清塚さんならではです。
◆ヴァイオリン練習曲のコンサート ~“まろ”が弾くとこんなにすごい!?~
四半世紀余りにわたり“N響の顔”として活躍してきたヴァイオリニスト、“まろ”こと篠崎史紀さんと、ピアニストの入江一雄さんによるブルーローズでのコンサートは、世にも珍しい「ヴァイオリン練習曲」をテーマにすえたプログラム! ヴァイオリンを習った人なら誰もが聴き覚えのある、おなじみの教本や練習曲集からの作品が並びます。
ベートーヴェンの「メヌエット」に、バッハの「ブーレ」。一曲ごとに解説をしてくれるまろさんのお茶目なトークに、こどもも大人も笑顔が絶えません。ボッケリーニを弾いても、ヴィヴァルディを弾いても、客席のこどもたちへの目配せを忘れないまろさん。「音やリズムだけじゃない、楽譜のエッセンス」の例として、桃太郎の物語を早口でまくしたてたり、ニュアンスたっぷりに語ってみせると、会場はすっかり釘づけに!
- ⒸTaira Tairadate/SUNTORY HALL
教本で目にした数々の楽譜が、まろさんと入江さんのデュオでまったく新しい音楽に聞こえてきます。ピアノ伴奏つきでアレンジされたカイザーは、「練習曲も、曲だと思って弾くといいものだよ」というまろさんの言葉の通り、練習曲への苦手意識を忘れさせてくれました。
そしてラストには、なんとあの「ツィゴイネルワイゼン」をファースト・ポジションだけで弾ききってくれました! 簡略化されているけれど、曲のエッセンスが詰まった素晴らしい試み。ヴァイオリンを始めた人の多くが「これを弾きたい!」と目指す一曲ですが、この編曲なら小さなお子さんでも「ツィゴイネルワイゼン」を体験できるかもしれませんね。
- ⒸTaira Tairadate/SUNTORY HALL
大きな身体と緻密なボウイングでヴァイオリンの魅力をいっぱいに引き出してくれたまろさん。そして、まろさんと終始いきいきした対話を繰り広げた入江さん。終演時には惜しみない拍手が贈られ、サイン会にも大行列ができました。まろさんのあたたかなお人柄を感じられるコンサートでした。
◆コンチェルト・ワンダーランド ~ピアノ・ヴァイオリン・オーボエ~
2日目最後の公演は、大ホールでの「コンチェルト・ワンダーランド」。オーボエ、ヴァイオリン、そしてピアノの名手たちが次々登場し、文字通り夢のステージを見せてくれました。
幕開けは、出口大地さんが指揮する東京フィルハーモニー交響楽団によるシュトラウス2世の『こうもり』序曲。たくさんの楽器が鳴り響くオーケストラと、楽しそうに指揮する出口さんの姿が舞台を盛り上げます。
アナウンサーの松本志のぶさんと出演者のトークでは、客席に問いかけるたび、元気にリアクションするこどもたちの姿が印象的。「コンチェルトのドキドキハラハラする感じを、みなさんも楽しんでほしい」という出口さんの言葉に期待が高まります!
- ⒸTaira Tairadate/SUNTORY HALL
ソリストのトップバッターは、オーボエ奏者の荒木奏美さん。モーツァルトの「オーボエ協奏曲」を伸びやかに歌い上げます。荒木さんのどこまでも飛んでいく音色は、初めてオーボエの音を聴いたこどもたちの心にも深く残るはず。
- ⒸTaira Tairadate/SUNTORY HALL
続いて、ヴァイオリニストの辻󠄀彩奈さんが登場し、ブラームスの「ヴァイオリン協奏曲」の終楽章を披露。モーツァルトとは打って変わって、大迫力のオーケストラ、そしてソリスト! 辻󠄀さんの熱演に、会場のボルテージも上がります。
- ⒸKoji Iida/SUNTORY HALL
最後は、“かてぃん”こと角野隼斗さんのラフマニノフ「ピアノ協奏曲 第2番」。
- ⒸTaira Tairadate/SUNTORY HALL
角野さんが登場すると、「角野さーん!」とこどもの掛け声が聞こえます。オーケストラの波から飛び出してくるようなピアノ。角野さんは、難曲の最初から最後まで、きらびやかな音色とタッチで駆け抜けました。
- ⒸKoji Iida/SUNTORY HALL
割れんばかりの喝采に包まれるホール。最後の最後に、ソリスト3名によるエルガー「愛の挨拶」がプレゼントされ、観客は夢の饗宴の余韻を噛み締めながら帰路についたのでした。
- ⒸTaira Tairadate/SUNTORY HALL
「コンチェルト・ワンダーランド」はアーカイブ配信でも視聴できますので、会場に行けなかった方も、もう一度コンサートの興奮を味わいたい方も、ぜひ配信でお楽しみください。
取材・文/原 典子・加藤綾子