こども音楽フェスティバル 2025 【DAY4】レポート

フェスティバル最終日、5月6日(火・休)の様子をレポートします!
◆クラシックたいそうコンサート
『こども音楽フェスティバル 2025』最終日となる5月6日(火・休)。あいにくの雨模様にもかかわらず、サントリーホールは午前から賑わっていました!
この日最初の公演は、ブルーローズ(小ホール)で開催された「クラシックたいそうコンサート」。“誠お兄さん”こと福尾 誠さんと、「Concert for KIDS」のオリジナル・キャラクター“そらくん”、そして石上真由子さん(ヴァイオリン)ら音楽隊による、盛りだくさんの1時間です。
音楽隊の迫力ある演奏やわかりやすい楽器紹介に、どんどん惹きつけられる会場。お待ちかねの「クラシックたいそう」が始まると、こどもたちはすぐさま椅子から駆け出します。「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」や「カルメン」に合わせて、飛んだり跳ねたり、ぐるぐる回ったり……大人の膝の上で一生懸命手足を振り回す赤ちゃんの姿も。サントリーホールでこんな光景が見られるなんて! と感動するひとときでした。
◆鈴木優人×角野隼斗 バロック・ライブ
大ホールでは当フェスのミュージック・パートナーの鈴木優人さんと、コンサート・プログラマーの角野隼斗さんによる「バロック・ライブ」。ステージにはグランドピアノ、チェンバロ、オルガン(リモートコンソール)、トイピアノ、ジュ・ドゥ・タンブル(鍵盤グロッケンシュピール)がズラリと並びます。こんなにたくさんの鍵盤楽器を、ふたりは一体どうやって演奏するのでしょう?!
はじめは角野さんのピアノと優人さんのチェンバロで、バッハの「インヴェンション第1番」からスタート。背中合わせで弾いているのに、ぴったりと息の合うふたり。音の出る仕組みも音量も違うピアノとチェンバロの音色が、とても自然に溶け合います。同じくバッハの「2台チェンバロのための協奏曲第3番」より第1楽章でも、チェンバロからピアノにメロディを受け渡したり、角野さんのソロが入ったり、バロック音楽の自由な楽しさがはじけます。
続いてバッハの肖像画が登場。手に持っている紙に書かれているのは「14のカノン」の楽譜です。ここで会場のお客さんを2チームに分けての合唱タイム。手元に配られた楽譜にある「14のカノン」からのバスパート(通奏低音)を角野チームが歌い、その楽譜をひっくり返して現れた旋律を優人チームが歌います。すると……美しいハーモニーが生まれたではありませんか! これが、昔の作曲家がパズルのような感覚で書いていた「カノン」です。
有名なパッヘルベルの「カノン」では、角野さんがオルガンとジュ・ドゥ・タンブルを、優人さんがチェンバロとピアノを、それぞれ片手ずつで演奏する場面も。「鍵盤が多ければ多いほどテンション上がる!」と角野さん。
次は「ラ・フォリア」「チャッコーナ」といった名前がつけられた通奏低音に、即興演奏を重ねていきます。ジャズやポップスでいうところのコード進行に似ていますね。
そして最後は、バッハの有名な「トッカータとフーガ」。優人さんのオルガンと角野さんのピアノで壮大に締めくくりました。鍵盤楽器に囲まれていつまででも遊んでいたいふたりはとっても名残惜しそう。自由なひらめきに満ちたライブで、こどもたちにもバロックの面白さが伝わったことでしょう。
◆クロージング・コンサート ~The オーケストラ!~
18時からは大ホールで、4日間にわたる『こども音楽フェスティバル 2025』の最終公演「クロージング・コンサート」が開催されました。当フェスはどの公演も30分〜1時間と短めですが、この公演だけは途中に休憩をはさんで約2時間。前半にコンチェルト(協奏曲)、後半にシンフォニー(交響曲)という、通常のオーケストラ・コンサートに近いプログラム構成で、本格的なコンサート体験をしてもらおうという企画です。演奏は読売日本交響楽団、指揮は同団のクリエイティヴ・パートナーを務める鈴木優人さん。コンサートは全編にわたり、鈴木優人さん、清塚信也さん、高見侑里さんの軽快なトークと進行で進んでいきます。
幕開けは、輝かしい金管楽器のファンファーレではじまるスッペの『軽騎兵』序曲。フェス期間中のさまざまな公演で楽器紹介が行なわれてきたので、オーケストラの楽器の音色を聴き分けられるようになった子も多いのではないでしょうか。鈴木さんはキビキビとしたテンポでオーケストラをカッコよくまとめ上げます。
コンチェルトのソリストは、公式アンバサダー/配信総合パーソナリティの清塚さん。グリーグのピアノ協奏曲より第1楽章を演奏します……と、その前にちょっとだけ冒頭の有名なピアノのフレーズを弾いてみせて、グリーグはこの曲で北欧の大自然を描いたと解説。オーケストラと一体となって、表情豊かに歌う清塚さんのピアノを聴きながら、風にそよぐ草原やフィヨルドの光景が浮かびました。
清塚さんによるソリスト・アンコールは、クラシックの名曲メドレー。こどもたちは大喜びです。
そして後半は、ドヴォルジャークの交響曲第8番。全4楽章からなる長い作品で、通常は楽章と楽章の間で拍手はしませんが、「今日は拍手したかったらしてもいいよ」とのこと。ここでは自由に、まずは楽しむことが大事です。
フルートののびやかな主題が印象的な第1楽章、弦楽器と木管楽器が歌い交わすような第2楽章、ヴァイオリンが魅惑的なメロディを奏でる第3楽章、トランペットのファンファーレではじまり、熱狂的なクライマックスへと向かう第4楽章。次から次へと素敵なメロディが登場し、これぞオーケストラという大スペクタクルを存分に味わうことのできる名曲です。こどもたちが40分あまり集中力を切らさず、じっと聴き入っていたのには驚きました。
満場の拍手に応えてのアンコールはエルガーの「威風堂々」。オルガンの石丸由佳さんも登場し、会場も手拍子で参加して、まさにグランドフィナーレにふさわしい演奏でした。
「鈴木優人×角野隼斗 バロック・ライブ」と「クロージング・コンサート ~The オーケストラ!~」はアーカイブ配信でも視聴できますので、会場に行けなかった方も、フェスの余韻を味わいたい方も、ぜひ配信でお楽しみください。
取材・文/加藤綾子・原 典子